フリップ芸・小池都知事の要請に、飲食店の反乱【松野大介】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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フリップ芸・小池都知事の要請に、飲食店の反乱【松野大介】

 

■飲食店から東京都への訴訟

 

 テレビが飲食店を感染源として取り上げる影響もあって、小池都知事の発案要請を全国の知事も取り入れた。政府(金がない自治体も)は満足な補償はせず、日本全国の飲食店と関連業種は不況に追い込まれていく。

 現状に一石を投じる形となったのが、少し前の話になるが3月、グローバルダイニング(モンスーンカフェ等41店舗経営)が、26店舗に対し営業を8時までとする〝命令〟を出した東京都を、提訴したこと。都内では2000店舗以上が短縮営業要請に協力しなかったのに、命令を出されたほとんどが「グローバル‥‥」の店舗であることなどで、「狙い撃ち」したことに対する違法性も訴えた。

 訴状での主張の1つに以下がある。

 飲食店が主要な感染経路である明確な根拠もない中で、営業を一律に制限することを可能にするコロナ特措法は営業の自由を侵害するもの。

 飲食店が感染源としてどの程度なのか?

 東京都モニタリング会議が公表している昨年12月1週で見る感染状況の感染経路では、同居(家庭内の感染)が約45%の1位、次いで施設が約20%、職場が10%で、そして「会食」全般が6%。さんざん都知事とテレビが指摘していた接客を伴う飲食は2.5%。

 つまり小池都知事(政府も)の問題は「科学的根拠に乏しい要請」と「補償なき要請」の2つとなる。

「グローバル‥‥」は昨年末で15億円の赤字を計上し、命令による4日間の短縮営業期間の損害は40005000万円にのぼる可能性があるというので、1店舗6万円の協力金はほぼ意味なし。

 複数の飲食店を経営する者とすれば地代や従業員だけでなく、店と取り引きしている酒屋などにも打撃が及ぶ。

 今までは店側も客側も多くが休業、自粛の要請に従ってきたが、従わずに狙い撃ちされて「命令」を出された「グローバル‥‥」が、闘いを挑む姿勢を見せた。

 5月、酒造メーカーが新聞に意見広告を出した。

「飲食店を守ることも日本の「いのち」を守ることにつながります」

 飲食店・酒造メーカーから声が上がり始める兆候だ。

 東京都は敗訴すると、今まで都知事がフリップで「夜の街」の労働と飲食を控えろと喧伝したことが誤りと認める必要性も生まれる。その場合、補償が足りず休業して倒産した会社や破産した経営者、補償が貰えず自殺した従業員にどう責任をとるのか。これは、政府や、小池都知事の要請を模倣する形となった全国の知事にも当てはまる。

 グローバルダイニングと都のやりとりは続いている。小池都知事の発案通り飲食店を感染源として報じていたテレビも責任は問われるべきだと思う。せめてこの裁判の経過をスルーせず、ぜひ報じてほしい。テレビは休業で疲弊する飲食店を報じる時、経営難の悲惨さを映すか、飲食店を支援する側を称えるレポートばかり。そんな報道が、非科学的な休業要請を出して満足な補償をしない政治に向くことが、今回の裁判で期待される。

飲食店ではないが、東京都は芝居の公演はOKで映画館の上演は中止にし、吉永小百合さんが涙ながらに訴え、映画業界が動くと、映画もOKにするという一貫性のなさを見せた。「映画も上演させてください!」と懇願されて承諾する態度は、ウイルス感染を防ぐ科学でも何でもなく、単にコロナを利用して権力を誇示しているだけではないか。

 

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松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

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